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TPP交渉差止・違憲確認訴訟訴え提起のご案内

平成27年5月8日

TPP交渉差止・違憲訴訟の会

弁護団共同代表弁護士  山田正彦
同         岩月浩二

このたび、国会議員を含む全国の原告800人超(随時増加中)、弁護士約100名を弁護団としてTPP交渉差止・違憲確認訴訟の訴え提起を行うことといたしました。

1 訴え提起

平成27年5月15日(金)14時
14時東京地方裁判所正門前より、訴え提起

2 訴え提起報告会(兼記者会見)

同日16時、衆議院第1議員会館1階国際会議室にて記者会見
(原中勝征元日本医師会会長、山田正彦弁護士、山本太郎参議院議員他予定)

はじめに

私たちは、5月15日、日本国に対して、TPP交渉の差止、同交渉の違憲確認、損害賠償を求めて、東京地方裁判所に提訴します。

TPPについては、農業や酪農の崩壊、食糧自給率のいっそうの低下、医療費の高騰、国民皆保険制度の形骸化、食の安全の侵害、二次創作に対する過剰な規制など、さまざまな危機感が国民(この訴訟で「国民」とは日本国憲法による基本的人権の享受主体として認められた個人を言います)の間にわき上がっています。

私たちが提訴に踏み切る理由は、TPP協定が、日本国憲法に違反して、私たちの生命に対する権利や、健康で文化的な生活を営む権利を侵害する結果となるおそれが極めて高いためです。

TPPは、等しく交渉参加国の国民の権利を侵害すると私たちは、考えます。私たちは、TPP交渉差止・違憲訴訟を通じて、広く交渉参加国の国民と連帯することを望んでいます。

以下、理由を述べます。

第1 TPPは、日本国憲法の基本的人権尊重原則と相容れません。

1 TPPはグローバル企業の経済活動の自由、利益を保障するため、これを妨げる国内制度を「非関税障壁」として撤廃することを大原則としています。多くの国々と同様、日本では、条約は法律に優越する効力が認められています。したがって、TPPが締結されると、TPPの条項にしたがって、日本の国内法をグローバル企業の経済活動の自由と利益を保障するため全面的に書き換える必要が生じます。

グローバル企業の経済活動の自由を尊重するために国内法制を書き換えることは、国民の生活に深刻な影響を及ぼします。

2 巨大な経済主体であるグローバル企業の経済活動は、国民の基本的人権としばしば対立する関係にあります。

したがって、グローバル企業の経済活動の自由と利益を保障することは、日本国憲法の基本的人権尊重の原則を揺るがせ、変容させます。

私たちは、国民が抱く危機感は、TPPの基本原則に由来するもので、十分な根拠があると考えます。

第2 TPPは日本国憲法の規定する統治機構の基本構造を揺るがせるもので、日本国憲法の統治機構に関する規定に違反します。

1 国政のほぼ全分野にわたるといってよいほど広範な条約体系であるTPPを締結することによって国会は膨大な法令の改廃義務を負い、また将来にわたってTPPに反する新たな法律の制定を禁止されます。内閣が一つの条約を締結するだけで、国会に対して、このように広範で包括的な立法上の制約を負わせることは、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」と規定する憲法41条に違反します。また、改廃すべき法令の範囲が不明確であることも同条に違反します。

2 ISD(投資家対国家紛争解決制度)条項は、国内の法的紛争であるにもかかわらず、外国投資家に対して、海外の投資家私設法廷に日本国を仲裁付託する権利を予め包括的に承認する条項です。これは、極めて広範な分野にわたって日本の司法権を放棄して私的な紛争解決制度に委ねることを意味します。したがって、ISD条項を締結することは、日本国憲法76条1項(「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」)に違反します。

3 TPP交渉は、異例の秘密保持義務を交渉参加国に課した交渉であり、極端な秘密交渉となっています。国民生活に深刻で重大な影響を及ぼす条約であるにもかかわらず、国民も国会議員も、その内容を知ることができません。これは、国会に条約の承認権を認め、外交に対して民主的コントロールを及ぼそうとする憲法73条3号但書に違反します。

第3 TPPは基本的人権を具体的に侵害します。

1 日本国憲法の基本的人権尊重の原則が、生命を最も重要な基本的価値とするものであることはいうまでもありません。しかし、TPPは、国民の生命、健康を具体的に侵害します。

日本国民は、憲法13条によって個人の尊重に基づき、生命、自由及び幸福追求の権利を保障され、憲法25条によって、健康で文化的な最低限度の生活を営む生存権を認められています。

生存権を保障する日本国憲法の下で、多くの立法が積み重ねられることによって、日本国民には生存権の現れとして様々な具体的権利が保障されています。

しかし、TPPは、こうした権利を侵害します。具体的には、安定的な食糧供給を受ける権利、農業従事者の農業や酪農を営むことで生活を維持する権利、安全な食の提供を受ける権利、適切な医療を受ける権利等が深く侵害されます。

そして包括的には生命に対する権利が侵害されます。

2 TPP交渉の極端な秘密主義は、憲法21条によって保障された、国民の知る権利を具体的に侵害しています。

第4 訴訟の趣旨

TPPによって、具体的に生命に対する権利や生存権などを侵害されることが明らかであるにもかかわらず、日本国は、秘密交渉によってその妥結を図ろうと急いでいます。

国民がTPPによって、被る被害は憲法に違反する、具体的で深刻なものです。

以上の理由で、私たちは、基本的人権の最後の守り手であり、憲法の番人とされる裁判所に対して、権利救済を求めるため、提訴することとしました。

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