tpp-kokuminkaigi

TPP阻止国民会議より、勉強会「日本の特許法・商標法等にTPPが及ぼす影響と今後求められる対応」(仮)のご案内、および自動車ROO(原産地規則)に関する資料と事務局長コメントです。

(以下、転載)

平成28年1月25日

関係各位

TPPを慎重に考える会
会 長   篠原 孝
TPP阻止国民会議
代表世話人 原中 勝征

勉強会のご案内

日頃の活動に格別の御理解、御協力を賜り心より御礼申し上げます。

さて、政府は大筋合意を受け11月末に「総合的なTPP関連政策大綱」を決定、本年度の補正予算として第190回通常国会で成立させました。また、TPP関連で特許法、商標法、著作権法など11本が一括法案として今国会に上程されます。

日本政府の前のめりの姿勢は極めて問題です。そもそも、英語版で約7000ページの協定書は、日本語訳が一部しか公表されず、政府が示した影響評価も説得力がありません。まずは協定書全文の日本語版を公表し、どのような基準で影響評価を試算したのかを国民に説明すべきです。

こうした状況を踏まえ、下記の通り勉強会を開催しますので、大変お忙しい中恐縮ですがご出席頂きますようご案内申し上げます。

1.日時   2月2日(火) 15:00~17:00

2.会場  衆議院第一議員会館  国際会議室(1階)

3.講演 「日本の特許法・商標法等にTPPが及ぼす影響と今後求められる対応」(仮)

日本弁理士国際活動センター
副センター長(米州担当) 柴田 富士子 氏

※御出席の可否をFAXにて御連絡賜ります様お願い申し上げます。

TPP阻止国民会議 事務局
TEL: 03-5211-6880
FAX返信先: 03-5211-6886

▼FAX申込書(PDF)
20160202_announcement-of-tpp-kokuminkaigi

くすぶり続ける自動車・部品の原産地規則(ROO)問題

2016年1月22日
TPP阻止国民会議
事務局長 首藤信彦

2月4日にニュージーランドでTPP条約署名という情報が早期に流れ、ニュージーランド政府もようやく署名会議開催を明らかにしたが、肝心のオバマ大統領は沈黙を守り、フロマンUSTR代表は「すべての国が署名できなければ意味ない」というような慎重発言を繰り返し、さらにダボス会議に行って、そこに来るTPP参加各国の経済担当相と個別会談をするということになっている。おりしも、日本の責任者である甘利大臣は自身の政治スキャンダルで苦境に立たされているが、それでも国会側の阻止を振り切ってダボスへ旅立った。ダボスでの協議がいかに重要かが推察されるだろう。

この一連の状況が何を意味するかというと、アタランタでの合意と、11月初頭に公表された条文テキストと、その前後に担当官などが個別に主張している内容とがかなりずれているということである。

USTRでは再交渉は困難であるとして、テキストはテキストとして署名させ、実際には議会側の要求に従った効果を生み出すためにサイドレターで各国の合意を水面下で取り付ける、あるいは不確定要素のある条項は、参加国に新たに実行計画を出させて、そこで具体的な結果を導く。。。などの便法が検討されているようである。

一方で、生物製剤のパテント期間の縮小を勝ち取った(と信じている)国々は一刻も早くテキストに署名して、その成果を確定させたいのだろうが、肝心のアメリカでは次第に熱の入った大統領選の行方と同時に、議会では再交渉要求や、審議の先送り主張が展望を不透明なものにしている。

通貨操作禁止条項の導入や人権・労働問題の再燃はTPA成立時の経緯から当然としても、自動車・部品の原産地規則(ROO)問題が再び脚光を浴びるようになった。1月7日にインサイド・USトレード紙がこれまで伝えられた交渉内容や結論と公表されたテキストの矛盾(下記に添付資料)を指摘したが、その後も各業界から不満が吐出し、自動車部品問題もアメリカの中小企業への影響を危惧する報告などが同じくIUST紙から1月22日にだされ、この問題がくすぶり続けていることを明示した。

<<添付資料>>

“自動車ROO(原産地規則)に関するTPP最終合意パッケージは2つの点で期待された結果と異なる”

2016年1月7日
Inside US Trade

11月に公表されたテキストに詳しく述べられている環太平洋連携協定(TPP)における最終的な自動車の原産地規則は、2つの重要な点で、これまでTPP担当官や情報筋が交渉終了直後に同規則についてのべていたものと異なっている。どちらにしても、非TPP諸国からの部品の使用を実際上増やすことになる。

第一の違いは、北米産のいくつかの重要な自動車部品について域内原産割合(RVC)のレベルが、いわゆるネットコスト(純費用)方式で計算して、35%になっていることである。TPP担当官や一部の自動車産業の関係者は以前、北米製造業者むけのすべてのもっともセンシティブな部品は40%あるいは45%のTPP域内のコンテンツを必要とするということを示唆していた。

TPPのもとで関税上の恩恵を受けるためには、自動車部品はネットコスト方式で、部品によって35%、40%あるいは45%のTPP域内原産割合(RVC)のレベルを満たさなければならない。一方、完成車はネットコスト計算で45%のRVCを満たさなければならないとされる。

第二の、以前には公表されていなかった原産地規則の問題は、RVCを算出するための特別の方法論(計算方式)が完成車だけでなく部品にも適用されるという点である。情報筋は、この代替的方法論は当初、完成車に限って適用されるものであると説明されていたと言う。

この事態を批判する人々は、それが原産地規則を弱め、中国などTPP域外の国々からのより多くのコンテンツを認めることになる、と恐れており、これが域内の自動車産業関連雇用に否定的な影響を及ぼすと主張している。しかしこれらの人々は同時に、この代替的方法論の影響の全容は予想するのが難しいということも認識している。

日本はもともと、米国が受け入れる意思を示していたレベルよりも低いRVCレベルを求めていたが、結局は妥協してこの代替方法論を受け入れた。日本はこの方法論が普通は、TPP域外からこれらの部品を調達する道を開くためのものではなく、物流上の都合で、自動車製造工場の近くで作られている部品に対して関税減免を申請するための面倒な手続きを軽減するためのものだと主張した。しかしながら、自動車産業に詳しい情報筋はこの日本の理屈づけに懐疑的である。

北米において作られた重要な自動車部品でRVCが35 %になったものとして、ある種の車体、マフラー、ラジエーター、エンジン部品の例がある。

カナダ自動車部品製造業者協会(Canadian Automotive Parts Manufacturers Association=APMA)のフラビオ・ボルペ会長はInside U.S. Tradeとのインタビューの中で、TPP交渉でこういう結果になったことは同協会にとって驚きだとのべた。

ボルペ氏は、TPPのもとでRVC35%の対象となる自動車部品の一部は、多数のカナダ企業によってつくられており、これは、カナダの生産者にもっとも集中しているそのような部品は、以前に彼がカナダ政府から得たRVCが40~45%レベル保証したと矛盾する。

たとえば、APMAによると、カナダの企業で現在乗用車以外の車の車体を製造しているものが26社あり、それらの車体は関税指標870.90のもとで区分されており、カナダの18社は一定のエンジン部品を製造していて8409.91と分類されている。これらの自動車部品がどちらも35%のRVCになった。

同じように、産業部門(ITAC-12)を代表して産業通商諮問委員会(ITAC)に出席している米国鉄鋼産業の代表は、TPP取り決めに関係する12月5日公表の報告書のなかで、多くの鋼材を集中的に使う自動車部品のRVCレベルは45%ではなく35%ないしは40%になってしまっていると、不満を述べた。たとえば、車体成型品(body stampings)は域内からの部品を40%使わないと原地産として認められないが、マフラーやラジエーターはもっとも低い35%でよいと、と報告は述べているという。

自動車と自動車部品の現地調達の割合の算出のための代替方法論(計算式)は、TPPの原産地規則にかんする章の付属文書3-D(Annex 3-D)で明記されている。この代替方法論は―交渉中に一部の筋が「柔軟性メカニズム」と呼んだもので―自動車及び自動車部品の指定されたRVCレベルを、一部の構成材料を現地調達扱いする近道(shortcut)を提供することによって満たしやすくするものである。

具体的には、もしある材料が、付属文書の表B(Table B of the appendix)にあげられた1つあるいはそれ以上の生産過程を経ていた場合、それらは自動車あるいは自動車部品の原産地割合の方にカウントされ、組み込まれることが可能だ。これによって、その自動車あるいは自動車部品についてRVCを満たすことが、通常の方法よりも容易となる。通常の方法だと、そうした材料はTPPに示された、製品ごとの原産地規則を満たすことが求められる。

表Bにあげられた11の生産過程は、複合組み立て(complex assembly)、複合溶接(complex welding)、ダイキャストその他の鋳造(die or other casting)、押し出し成型(extrusion)、鍛造(forging)、ガラスあるいは金属の焼き戻し(heat treating including glass or metal tempering)を含む熱処理、ラミネート加工(laminating)、機械加工(machining)、金属成型(metal moulding)、モールディング(moulding)、プレス加工を含むスタンピング(stamping including pressing)である。

しかし、この柔軟メカニズムが完成自動車向けと自動車部品向けでは、機能する仕方に重要な違いがある。自動車については、付属文書の表Aに、弾力性メカニズムを利用する原産地のものとしての資格を得ることができる限定された7つの製品のリストがある。これらは強化安全ガラス(tempered safety glass)、ラミネート加工された安全ガラス(laminated safety glass)、乗用車用の車体(auto bodies for passenger cars)、その他の車両の自動車車体、バンパー、車体成型、ドア組み立て、ある種の車軸である。

この限定リストは、材料が原産地規則を満たすものとして認められるようにするための弾力性メカニズムを、自動車生産者が利用できる限度を定めている。

自動車部品に柔軟性メカニズムを利用する企業の能力は違ったかたちで制限されている。第一に、それは、エンジン、バンパー、シートベルト、ブレーキ、ハンドル、エアバッグなど付属文書の表Cにあげられた14の特定の自動車部品に使われる材料を(原産地規則を満たすものとして)認めるのにのみ使われうる。
第二に、付属文書は、柔軟性メカニズムが適用される材料は、表にあげられた自動車部品の全体の価値の決められたパーセンテージだけである。

たとえば、バンパーにかんして求められる原産地割合は、ネットコスト方式では45%である。バンパーにつかわれる材料については、柔軟性メカニズムを使って(原産地のものであると)認められうるのであるが、そのような材料はバンパー全体の価値の10%だけが認められる。RVCに適合するために必要なバンパーの価値の残り35%については、材料が原産地のものであるとして認められるために標準的な方式を使わなければならない。

表Cにかかげられた14の自動車部品のうち10は、45%のRVCが求められ、これらの部品の全てについては、柔軟性メカニズムを使うことができる材料の価値の制限は10%である。残りの4つの自動車部品は、40%のRVCが要求され、これらについては柔軟性メカニズムによって原産地割合が5%の材料のみに使うことができる。

アトランタでTPP交渉が終結したあと、複数の情報筋は自動車への柔軟性メカニズムの活用にたいする同様の上限について述べていたが、それは11月5日に公表された条文テキストには述べられていなかった。

ITAC-12の報告書は、TPP域外からのもっと多くのコンテンツを柔軟性メカニズムの対象とすることをどの程度まで認めることになるのかは明らかではなかったとのべる。このメカニズムとは別に、TPPはすでに、多くの自動車部品が原産地規則適用を認められるための2つのオプションを規定している。つまり、RVCに適合するか、あるいは関税分類を変更するかのいずれかである。

報告書は「大幅な改変にしたがったこの代替システムが、既存の関税分類変更にかんする規則とどう異なるのか、また、それがどのようにして、究極的にはもっと多くの非TPPのコンテンツがTPP国原産とみなされるようになるのかということは分かっていない」とのべた。

ITAC-12報告は、もっと明確にするために、付属文書の表Bにあげてある生産過程は、TPP実施法案に付随する行政措置声明(Statement of Administrative Action)で規定するよう勧告した。

全体として、ITAC-12は、TPPの自動車原産地規則で、車両、自動車製品への米国以外、非TPP地域産の鋼材の使用増大につながりやすいことを「非常に懸念している」とのべた。これは米国の鉄鋼企業にとっても米国の製造業全般にとっても否定的な結果になる。

ITAC-2の評価よりはるかに厳しいものであったが、内部的には、自動車の原産地規則を支持するかどうかをめぐって態度が分かれた(Inside U.S. Trade, Dec. 25, 2015)。ITAC-12もITAC-2もTPP全般を支持するのか、あるいは反対するのか確固とした立場はとらなかった。

柔軟性メカニズムを批判する人びとは、それがTPPのRVCレベルを一層弱めるものだと主張している。北米自由貿易協定(NAFTA)に盛り込まれたレベルよりも低くなっており、それによって原産車両、自動車部品に使われる非TPP諸国からのコンテンツの増大に道を開くものとなる。

これらの人々は、表Aにある材料が自動車組み立て工場の近くから調達されており、したがってTPP域外から輸入される可能性はないとの日本の主張にたいする反論を2点打ち出した。

第一は、タイや中国など非TPP国を含む現在のサプライチェーンが維持できるようにするためには柔軟性メカニズムが必要だと、日本が主張していたことである。もし、それが真実ならば、柔軟性メカニズムは日本の企業の非TPP地域からの投入を何らかの形で引き続き活用できるようにしなければならないと、これらの人びとは論じた。

第二は、これらの批判者は表Aにある製品の一部(バンパーなど)はまさしく国際的に取り引きされているものもあるが、材料や出荷技術の前進によっていっそう実現可能になるものもある。ある筋は自動車製造企業が米国やEUから求められているより高い排気ガス排出基準を満たす唯一の道は、より軽い材料を取り入れることであり、このことでこうした材料がいっそう取り引き可能になりうることに注目した。

これらの心配にもかかわらず、ボルペ氏は、一部の日本企業が、サプライチェーンを中国から分散させるために、カナダでの自動車部品生産への投資に関心を表明しているとのべた。

「最終的な結果についてのアカデミックな議論がおこなわれているが、私としては、日本の資本がカナダの製造業界に進出したいと考えていることを聞いて驚いている」、「これは直感的にはわかりにくいが、ひょとしたら予期せぬ便益をカナダにもたらすかも知れない。」 -マシュー・シュ―エル(Matthew Schewel)

以上
(仮訳提供:TPP阻止国民会議)