今年4月にTPP交渉差止・違憲訴訟の会弁護団に加わった憲法学者の小林節慶應義塾大学名誉教授
先送りではなく「廃案」へ! 参院選と臨時国会で審判を
4月中の衆議院通過をめざしていたTPP承認案と11の関連一括法案は、議事運営を巡る混乱や熊本地震への対応もあり、今通常国会での成立は断念された。野党の追及で、関税撤廃の聖域を守ることや十分な情報開示を求めた国会決議に反する内容も次々と明らかになった。継続審議となり、参院選後の臨時国会へと先送りされたわけだが、7月の参院選でも、大きな争点にしなければならない。
TPP交渉差止・違憲訴訟の会では、国会議員へのアンケートを行った。自民・公明は回答ゼロ。民進・共産・社民・生活など58名が反対を表明した。明確に反対している議員がいることを確認しつつ、その他の議員にも立場を示すよう求めたい。
ところで、2011年11月に全国農業協同組合中央会(全中)が行った「TPP交渉参加反対に関する国会請願」では、自民党166名、民主党126名を含む、365名の国会議員がTPPに反対していた。このうち、自民党は146人(8割)が現職議員だ。その後、自民党政権はTPP交渉に参加したわけだが、賛成へと立場を翻すメリットがどこにあったのだろうか。
TPP交渉差止・違憲訴訟の会幹事長の山田正彦は次のように話す。「私が知っている自民党議員のなかにも、本当は反対の人が何人もいます。政党が独裁的になり、どうも政治がおかしくなっているのではないでしょうか。今こそ、選挙で審判を下すときです」
憲法学者・小林節氏も弁護団に。「民主主義に対する冒涜だ」
そもそも、2012年12月の総選挙で自民党が掲げたポスターが、「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。日本を耕す!」だ。今年4月にTPP交渉差止・違憲訴訟の会弁護団に加わった憲法学者の小林節慶應義塾大学名誉教授は、「法律以前の不道徳の問題」と切り捨てる。
小林氏は、TPPの本質を「アメリカ発の多国籍企業による世界支配の構造です。戦争法とセットでアメリカとの一体化、属国化を進めることにほかなりません」と指摘する。「安倍首相は、安保法制で幸福追求権(憲法13条)を持ち出しますが、TPPは食料安全保障、食の安全、医療や金融と国民生活に幅広く影響し、決して幸福追求にはなりません。主権の放棄であり、民主主義に対する冒涜、人権侵害の問題です。憲法学者として、日本人として、もう放っておくことはできません」と、弁護団に加わった理由を話す。
安倍首相は、昨年10月の大筋合意後の会見で、TPPのメリットは日本茶と眼鏡と陶磁器だと説明した。自由貿易で豊かなになるというのは、もはや幻想でしかない。
前述の山田はこう話す。「甘利元大臣の番記者に『TPPで何を得たのか』と聞いたら、少し考え、『安全保障だ』と言うんです。メリットなど、最初からないんですよ」
将来に悪影響を及ぼす協定を批准する意味など全くない。TPPは継続審議ではなく、消滅させなければならない。廃案しかない。
※本記事は、TPP交渉差止・違憲訴訟の会会報「TPP新聞」vol.05(2016年6月発行)より転載いたしました。
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