2017年6月7日(水)10時、東京地方裁判所103法廷にてに、TPP交渉差止・違憲訴訟の判決が言い渡されました。
判決で、中村さとみ裁判長(東京地裁民事第17部)は、原告らが訴えた3つの請求に対し、「『TPP交渉差止請求』は、不適法であるため却下。『違憲確認請求』は、訴えの利益がないため却下、『損害賠償請求』は、抽象的な権利主張に留まっており、法廷利益と認められないため棄却」とし、原告らの訴えを全面的に却下、ないし棄却しました。
原告らの実情・実態を見ることなく、実質審理に入ることのない門前払い判決であり、憲法判断に踏み込むことを一切せず、「憲法の番人」の責任を放棄した判決です。
5,462名の会員で構成するTPP交渉差止・違憲訴訟の会と弁護団は、以下の「抗議声明」を発表しました。判決は、司法の自殺行為といわざるを得ず、裁判所が自らに課せられた責務を放棄したことに強く抗議します。
判決言渡し後に開催した総会では、第1次・第2次訴訟について控訴すること、TPP関連の新たな行政訴訟(第3次訴訟)を起こすことが決議されました。詳細は追ってお知らせいたします。
▼判決全文(6月7日付)
TPP交渉差止・違憲確認等請求事件 判決
(別紙)原告ら主張
2017年6月7日
TPP交渉差止・違憲訴訟の会
代 表 代 行 池住 義憲
弁護団共同代表 山田 正彦
〃 岩月 浩二
TEL 03-5211-6880 FAX 03-5211-6886
「TPP締結差止・違憲確認訴訟」判決に対する抗議声明
本日、東京地方裁判所民事第17部(裁判長裁判官中村さとみ、裁判官吉村弘樹、裁判官水谷遥香)は、「TPP締結差止・違憲確認訴訟」に対し、憲法上、裁判官に課せられた「憲法の番人」としての責任を自覚することなく、政府の重大な違憲行為に目をつむり、私たちの訴えを門前払いする判決を出しました。本日の判決は、司法の自殺行為といわざるを得ません。私たちは、裁判所が自らに課せられた責務を放棄したことに強く抗議します。
2015年5月の提訴以来、私たちは、TPPが「貿易及び投資の自由化」の名の下に日本国憲法の原則を変容させ、国民(日本国憲法が保障する諸権利を享有するすべての人、以下同じ)の生存権・幸福追求権(人格権)・知る権利を侵害すること、他の締約国の人々にも多大な損害を与えるものであること、などを主張してきました。(提訴当初、「TPP交渉差止」、「違憲確認」、「損害賠償」を求め、2016年2月のTPP協定署名後は「交渉差止」に代えて「締結差止」に変更。原告数1,580名)。
2年間、7回の口頭弁論において、私たちは24通の準備書面を提出し、TPPによって人権侵害が生じると考えられる13の問題点を整理して主張してきました。合わせて、TPP協定文やTPPに関する新聞記事、専門家による論文等を証拠提出し、可能な限り主張・立証活動を行ってきました。
一方被告国は、行政権の行使は民事訴訟の対象とならないとする形式的な主張や、被侵害利益が存在しないなどといった一般的・抽象的な「反論」を展開することに終始し、事実関係や問題点に関する具体的な主張に対して、個別の反論はおろか、まともな認否すらもしませんでした。私たちは本訴訟の審議を充実させるため、被告国に求釈明や調査嘱託を申し立てるとともに、具体的な立証のために人証の請求も行いました。
しかし、裁判所はそうした私たちの申立て・請求を全て一方的に却下し、「審理は十分になされた」として突然、審理を打ち切り、TPPの内容に触れずに訴えを門前払いする本日の判決となりました。私たちが私たちの生命・身体等の権利侵害を防ぐべく提訴したにもかかわらず、裁判所が十分な時間と必要な証人尋問を経ることなく、問答無用の判決を言渡したことに、私たちは強い憤りをここに表明します。
司法府は、政府の行為によって生じた国民の権利侵害ならびに精神的苦痛を救済する最後の砦です。本来、どのような権力・圧力からも影響されることなく、独立して公正な判断を下し、権利侵害、精神的苦痛に苛まれている国民を救済する最後の砦です。司法府が従うべきは、唯一、憲法と法律です。私たちには、司法府に対し、「憲法の番人」としての責任を果たさせる不断の努力を行う責務があります。今後も全力をあげてこの裁判に取り組む決意を最後に表明します。
以 上