2023年3月24日
種子法廃止意見確認訴訟原告団・弁護団
TPP交渉差止・違憲訴訟の会
1 本日、東京地方裁判所民事第2部(品田幸男裁判長)は、種子法廃止違憲等訴訟について、原告らによる切実な訴えを不当にも棄却した。
2 本裁判で、原告らは、「食料への権利」がわが国の憲法上の権利であることを訴えるとともに、2018年4月に廃止された主要農作物種子法(種子法)廃止法が、この「食料への権利」を侵害するものであり、違憲無効であると訴えた。
「食料への権利」は、誰でも、いつでもどこでも、良質で十分な量の安全な食料を得る権利を意味する。同権利は、世界人権宣言25条及び社会権規約11条1項に包摂されている人権であり、国際人権法上確立している重要な権利である。ゆえに、わが国の憲法上の権利として保障されるべきである。
また、食料の根本である種の生産体制や安定供給を保証する種子法は、この「食料への権利」に根拠を置く法律である。ゆえに、種子法を廃止することはこの「食料への権利」を侵害することにほかならず、同廃止法は憲法違反であって無効である。
3 本判決は、①種子法廃止法の施行によって、原告らの権利・利益が侵害されていない、②種子法が憲法上の権利を具体化したとは言えない、などとして不当にも原告らの訴えを退けた。
4 しかしながら、戦後直後に種子法が制定されたことで、我が国の食料増産が図られ、国民に食料が安定的に提供されている。種子法に基づき、良好で十分な量の安全な食料を得る権利が具体化されたものである。
そして現在、種子法の廃止により、既に栃木県で原種の価格が3倍に高騰するなどの事情が生じてきている。以前の種子法に伴う事務が国からの地方交付税で賄われてきたものであるから、種子法廃止により、法律の根拠がなくなった以上、地方自治体による種子供給の事務に十分な財政措置が続く保証はない。
この点について、本裁判において、原告らは被告国に対し、種子法廃止後の種子供給に関する国の財政措置の増減等について釈明したものの、被告国はまともに返答しようとしなかった。しかし、判決はこのような被告国の対応を問題視しようともせず、十分な根拠なく原告らの権利が侵害されているとはいいがたいと判示したのであって不当としか言いようがない。
5 昨年10月7日の結審後、原告らはインターネットなどを通じ、本裁判の公正判決を求める署名を集めた。その総数は5万3724筆である。また、賛同者からはネット上で、「すべての人が安心してご飯を食べられる社会のため種子法を守ろう」「タネを守りましょう。外資系ではなく国産で種を繰り返し使えるもので」「子供たちの為にも守らなければなりません」「食料は国を支える最も重要なものです」など、多くの切実なコメントが寄せられた。
本判決は、原告ら・署名に賛同された方の声を聞き入れようとせず、極めて不当な判断である。
6 本判決では、原告らの主張する食料への権利について、憲法25条1項にいう「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の実現に向けて、一定の衣食住の保障が必要となることは否定できない(判決40頁)とした。私たちの訴える食料への権利について、憲法25条1項で保障される余地があることに言及した。食料への権利について尊重する姿勢をみせたといえる。
私たちは、司法の役割を放棄した不当判決に断固抗議するとともに、控訴審においては、食料への権利が憲法上の権利であること、種子法がこの権利を具体化することを再度詳細に述べていく。
そして、司法が本来の使命を全うする日まで、全力でたたかい続けること、同時に、種子法の復活を求め、裁判外でも奮闘していくことを宣言する。
以 上