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2025年2月20日

種子法廃止意見確認訴訟原告団・弁護団
TPP交渉差止・違憲訴訟の会

1 本日、東京高等裁判所民事第24部(増田稔裁判長)は、種子法廃止違憲等確認訴訟について、控訴人らによる訴えを不当にも棄却した。

2 本裁判で、控訴人(原告)らは、「食料への権利」がわが国の憲法上の権利であることを訴えるとともに、2018年4月に廃止された主要農作物種子法(種子法)廃止法が、この「食料への権利」を侵害するものであり、違憲無効であると訴えた。

 「食料への権利」は、誰もが、良質で十分な量の安全な食料を得る権利を意味する。同権利は、世界人権宣言25条及び社会権規約11条1項に包摂されている人権であり、国際人権法上確立している重要な権利である。ゆえに、わが国の憲法上の権利として保障されるべきである。

 また、食料の根本である種の生産体制や安定供給を保証する種子法は、この「食料への権利」に根拠を置く法律である。ゆえに、種子法を廃止することはこの「食料への権利」を侵害することにほかならず、同廃止法は憲法違反であって無効である。

3 原判決(東京地裁判決)は、採種農家である控訴人菊地について「(種子法廃止により)現実かつ具体的な危険又は不安が認められる」として同人の公法上の地位を認め、確認の利益は存するとした。もっとも、「食料への権利」については具体的な権利利益として保障されていないとして否定した。

 そのため、控訴人(原告)らは本控訴審において、この原判決の内容を乗り越えるべく、「食料への権利」が具体的な権利として存することについて、控訴人ごとに権利内容を整理するなどし、主張を補充した。

4 また、控訴審の審議中、我が国において、コメの民間品種の代表例である「みつひかり」の不正問題が発覚し、さらに、昨年夏以降、のコメ供給不足の事態が生じた。

 国は種子法廃止法案の審議の際、わが国にコメの優れた民間品種の種が存すること、そして、わが国では米供給不足が解消されているとし、同法を廃止する立法事実が存すると主張していた。しかし、前述の「みつひかり」不正問題やコメ不足の問題からしても、そのような立法事実が存しなかったことは明らかである。控訴人(原告)らは控訴審でこの事実を指摘し、種子法廃止は誤りであったことを主張したものである。

5 しかるに、本判決は原判決と同様、憲法上「食料への権利」が具体的な権利利益として付与され保障されているとはいえず、かつ、「食料への権利」について控訴人らが控訴審で訴えた内容についても、具体的な理由も付さず、主張を排斥するに至った。

 そして、「みつひかり」不正問題や昨年からのコメ供給の不測の事態についても「判断を左右するものではない」とした。

 裁判所は、控訴人らの主張に全く向き合おうとせず、安易にこれを否定したものである。憲法感覚の欠如を示すものであり、極めて不当である。

6 種子法廃止以後、全国35の道県で種子条例が制定されている。地方自治体が、私たちの食料への権利を守るため、種子を公的に管理し続けるために条例を制定したものである。

 前述の「みつひかり」不正問題やコメ不足の問題からも明らかなとおり、コメなどの主要農作物の種の生産については、国や都道府県が責任をもって関与し続けるべきであり、種子法は復活させるべきである。

 私たちは、司法の役割を放棄し、憲法判断を回避した不当判決に対して断固抗議するとともに、司法が本来の使命を全うする日まで、全力でたたかい続けること、そして同時に、種子法の復活を求め、裁判外でも奮闘していくことを宣言する。

以 上

種子法廃止違憲確認訴訟控訴審 判決