2025年3月6日
種子法廃止意見確認訴訟原告団・弁護団
TPP交渉差止・違憲訴訟の会
1 上告提起及び上告受理申し立ての報告
種子法廃止違憲確認訴訟原告団・弁護団は、本年2月20日の種子法廃止違憲確認訴訟の控訴棄却判決(東京高等裁判所 増田稔裁判長)について不服であるため、本年3月4日付で上告提起及び上告受理の申し立てをしました。
2 本裁判について
本裁判は2019年5月に提訴しました。私たち原告(上告人)らは、国会で制定された主要農作物種子法(種子法)廃止法によって種子法が廃止されたことが、原告らの「食料への権利」を侵害するので、憲法違反であり無効である、と訴えてきました。
「食料への権利」は、誰でも、いつでもどこでも、良質で十分な量の安全な食料を得る権利です。この権利は、世界人権宣言25条及び社会権規約11条1項に包摂されている人権であって、国際人権法上確立している重要な権利です。私たちはこの権利が、日本国憲法25条の生存権として保障されると主張し、同時に憲法13条・22条・29条との関係でも保障されるべきと主張しました。
その上で、食料の源である種の生産体制や安定供給を保証する種子法は、この「食料への権利」に根拠を置く法律にほかならず、種子法を廃止することはこの「食料への権利」を侵害することにほかならず、同廃止法は憲法違反であって無効である、と主張しました。
この裁判では、全国の農家(一般農家・採種農家)、消費者が原告となり、控訴段階で約800名の原告が国を相手に裁判をたたかってきました。
3 東京地裁判決について
2023年3月24日の東京地裁判決は、採種農家である原告について、種子法廃止法の施行以降、種子法に基づく公法上の地位(=種子法に基づき自らの土地がほ場指定される地位)を喪失しているから、「現実かつ具体的な危険または不安が認められるというべき」とし、原告の公法上の地位についての確認の利益を認めました。そのほか、種子法廃止により財政基盤が安定しなくなることや、種子法廃止法の審議時間がわずか10時間程度であることの問題性に関する言及もありました。
また、「食料への権利」について、憲法25条で保障される余地がある、ともしました。
東京地裁判決は、「食料への権利」が種子法との関係で具体化されておらず、個々人の権利として保障されていないため、原告らの訴えは排斥されました。しかし前述のとおり、種子法廃止による問題に向き合い、採種農家の原告の公法上の地位を認めるなど、「食料への権利」を一歩前進する判断がなされたといえます。
4 東京高裁判決についてと現在までの到達点
ところが、本年2月20日に下りた東京高裁判決では、種子法廃止による被害についての言及もなく、私たちの控訴を棄却する不当な判断をしました。東京高裁判決は不当な判断でした。
もっとも、前述の東京地裁判決で認められた、採種農家の地位についての「確認の利益」や、同地裁判決が認定した内容を否定することはしませんでした。
以上のとおり、東京地裁判決でも東京高裁判決でも、私たちの訴えを認めていません。しかしながら、先ほど述べた通り、採種農家の原告について「確認の利益」を認め、そして、「食料への権利」が憲法上の権利として認められる余地があるとされています。
私たちの訴えた内容についての憲法判断の可能性は、まだ否定されていません。
5 最高裁への上告提起及び上告受理申し立てを決断しました!
そこで、私たちは、本件について、わが国の終審裁判所である最高裁判所に上告提起及び上告受理申し立てをすることとしました。
最高裁判所は、原判決について憲法解釈の誤りがあったり、判例に反する判断その他の法令の解釈に関する重要な事項を含む事件などについて審議されることとなります。
本件においては、まずもって、東京高裁判決が、私たちの訴えている「食料への権利」が憲法上の権利であることを認めていない点があります。この点について、違憲立法審査権を有する最高裁判所にその判断を求めたいと思います。
併せて、私たちがこれまで主張してきた、種子法の立法目的や規定の解釈や食と農の基本法である食料・農業・農村基本法の解釈について、東京高裁判決は誤りがあるので、その点についても訴えたいと思います。
6 私たちの決意表明
現在、わが国ではコメの供給不足が社会問題化しています。生産体制を守り食料安定供給を図るべく、食の源である種を保障する法律が必要不可欠です。また、いわゆる「みつひかり」不正問題で明らかとなったとおり、コメなどの種子の生産を民間に任せるのではなく、国・都道府県がしっかりと管理すべきです。
種子法廃止によって生じてしまったひずみを解消すべく、種子法を復活させなければなりません。私たちは、最高裁において、食料への権利が憲法上の権利であること、種子法がこの権利を具体化することを再度詳細に述べ、たたかっていきます。
また、国会では種子法復活法の制定に関する動きもあると聞いております。私たちは、種子法の復活のため、裁判外でも奮闘していくことを宣言します。
以 上