
2025年11月7日
種子法廃止意見確認訴訟原告団・弁護団
TPP交渉差止・違憲訴訟の会
11月6日、最高裁判所第3小法廷から弁護団に、種子法廃止違憲確認訴訟に関し、上告棄却・上告不受理決定の通知が届きました。極めて不当な判断です。原告団・弁護団及びTPP交渉差止・違憲訴訟の会は、本日、本決定を受けての声明を発表します。
私たちはこの間、最高裁判所第3小法廷にあてた緊急署名を呼びかけました。この間、8000筆の署名が集まり、すでに最高裁判所には届けております。残念ながら不当な決定が出されたため、本日をもってこの署名呼びかけは終了となります。皆様ご協力ありがとうございました。
今回の裁判は、この決定をもって終了となりますが、私たちは種子法復活を求める闘いを続けていきます。また、食料への権利を守り抜くため、今後も奮闘し続けます。今後、報告会などを予定しております。詳細が決まり次第、改めてお知らせいたします。
声明
1 2025年11月5日,最高裁判所第3小法廷(石兼公博裁判長)は,種子法廃止法違憲確認訴訟について、上告人らの申立につき,上告棄却及び上告不受理の決定を行った。
本裁判は、2018年4月に主要農作物種子法廃止法(種子法廃止法)の施行により種子法が廃止されたことについて、翌2019年5月、原告らの食料への権利を侵害するので憲法違反で無効であるとして、国を相手に起こした訴訟である。
最高裁は、地裁判決及び高裁判決と同様、種子法廃止法の制定を憲法違反と認めず、極めて不当な判断を行った。
2 食料への権利は、誰でも、いつでもどこでも、良質で十分な量の安全な食料を得る権利である。この権利は、世界人権宣言25条及び社会権規約11条1項に包摂されている人権であって、国際人権法上確立している重要な権利である。
原告らは、この食料への権利がわが国の憲法25条、13条等で保障されていると主張し、かつ、食料の根本である種の生産体制や安定供給を保障する種子法は、この食料への権利に根拠を置く法律であると主張した。そして、種子法を廃止することはこの食料への権利を侵害することにほかならず、同廃止法は憲法違反であって無効とすべき、すなわち、種子法を復活すべきであると訴えた。
3 本裁判では、全国の農家(一般農家・採種農家)、消費者が原告となり、提訴時には約1500名の原告が国を相手に闘い、また、最高裁への上告時でも約800名の上告人が闘い続けた。
第一審の地裁判決では、採種農家である原告について、種子法廃止法の施行以降、種子法に基づく公法上の地位(=種子法に基づき自らの土地がほ場指定される地位)を喪失しているから、「現実かつ具体的な危険または不安が認められる」とし、地位の「確認の利益」が認められた。さらには、「食料への権利」について、憲法25条で保障される余地がある、とも認定された。また、第二審の高裁判決でも、この確認の利益は否定されなかった。
しかし、第一審も第二審も、私たちの食料への権利を認めようとせず、最終的に請求を否定したものである。
4 最高裁の上告段階において、上告人らは、食料への権利について再度整理して主張した。食料への権利として消費者に食が安定的に提供されることは必要不可欠であること、そして、そのために農業者の地位が保障されるべきであり、とりわけ、種について、生産者である採種農家において土地が圃場指定される地位が保障される必要があると主張した。また、食料への権利は人が持っている基本的な権利であり、より保障されるべき必要があることについても主張し続けた。
食料への権利については、人が生きていくうえで必要不可欠な権利であり、絶対的におかしてはならない。私たちは以上の点を体系的に整理して主張し、最高裁の判断を待ち続けた。
しかし、最高裁は口頭弁論期日を開こうとせず、私たちの訴えを退けるに至ったものであり、不当と言わざるを得ない。
5 本訴訟の提起以降、種子法復活を求める声が広がり、全国の35の道県で種子法と同内容の種子条例が制定された。この結果、全国各地での種子生産体制は種子法廃止前とほぼ同等の状態が維持されている。
また、種子法廃止前に出された平成29年11月15日付農水次官通知は、都道府県による種子生産については民間事業者に移行するまでの暫定的に続ける旨の内容であったが、通知が出されてから約4年が経過した令和3年4月1日に改正され、当該記載内容が削除された。そのうえで、「都道府県は、稲、麦類及び大豆の種子について、農業者が円滑に入手できることが我が国の食料安全保障上重要であることにかんがみ、その安定供給を確保するものとし…品種の開発、種子の生産・供給体制の整備等に取り組んでいくことが求められる」とし、種子生産供給について、都道府県が必要な措置を講じていく必要があることが新たに規定された。
これらは、本裁判の原告をはじめとする多くの市民が、種子法廃止に抗い、闘い続けた成果である。
6 上告審の審理中、インターネットなどを通じ、本裁判の公正判決を求める署名を集めたところ、わずか2週間で8000筆を超える署名が集まった。賛同者からはネット上で、「すべての人が安心してご飯を食べられる社会のため種子法を守ろう」「子供たちの為にも守らなければなりません」「食料は国を支える最も重要なものです」など、多くの切実なコメントが寄せられた。
これらの声は、決して無駄にしてはならない。
私たちは、司法の役割を放棄した不当な判断に断固抗議するとともに、今後も主要農作物の種子の安定供給のため、種子法の復活を求め闘いぬくことを決意する。
また、食料への権利を守るための闘いはこれからである。わが国における食の安定供給の確保、そして、農業者の地位向上のため、法廷内外で今後も奮闘することを宣言する。
以上









