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2017年2月9日

米国の「TPP永久離脱」を受けての声明

TPP交渉差止・違憲訴訟の会
代表代行 池住義憲
TPP交渉差止・違憲訴訟弁護団
共同代表 弁護士 山田正彦
  同  弁護士 岩月浩二

 去る1月23日、トランプ米大統領は、環太平洋経済連携協定(TPP)署名国からの離脱、およびTPP交渉から永久に離脱する大統領令に署名しました。同30日、TPP事務局の役割を果たしているニュージーランドに書簡を送付して、正式に通告しました。
 昨年2月4日に日本を含む12ヵ国が署名したTPPに関する合意は、トランプ大統領の離脱宣言にかかわらず、法的には、効力が発生しないままの状態で存在している状態に変更はなく、今後、TPP第30章の要件(注)を充たせば、効力を生じることもあり得ます。
 しかし同時に、TPP第30章の要件に照らしてTPPの発効には米国の批准が不可欠であり、事実上不可能となりました。

 トランプ米大統領は大統領令のなかで、「個別の国と直接一対一で将来の貿易交渉を進める」とも宣言し、「米国第一」を掲げて自国に有利になるよう、TPP以上に厳しい貿易交渉を「二国間」で進めていく姿勢を強調しています。
 これを受けた安倍首相は、1月26日衆院予算委員会で、TPPの意義を今後も「腰を据えて米側に働きかける」と従来の意思を示しつつ、「二国間の交渉についても、しっかり交渉していきたい」と米国との貿易交渉に応じる可能性に触れました。
 そして27日同委員会で、日米二国間交渉について「絶対排除するのかと言われたら、そうではない」と発言しています。

 私たちは、かねてより、TPPは憲法が定める国民(日本国憲法が保障する諸権利を享有するすべての人、以下同じ)の生存権や幸福追求権、国民の知る権利に違反すること、「貿易及び投資の自由化」の名の下に日本を含む締約国の人々に多大な損害を与えるものであることを主張、指摘してきました。
 そして、2015年5月に、「TPP交渉差止」(2016年2月の署名以後はTPP締結差止に変更)、「違憲確認」、「損害賠償」を国に求めて東京地方裁判所に提訴(原告I,582名)し、現在も係争中です。

 TPP協定が覆う分野は、農業、医療、食の安全、労働、地域経済、保険/共済システム、投資/金融システムなど、国民の生活全般に関係します。
 日本の国内ルール全般に影響を及ぼします。TPPによって日本国憲法の基本的人権尊重原則は、事実上、グローバル企業の経済活動の自由の尊重原則に置き換えられてしまいます。

 基本的人権の保障は、わずかに修正原理の末尾に置かれる存在に過ぎなくなるのです。こうした点から、TPPは、葬り去る以外にないのです。
 私たちが求めるのは、基本的人権を尊重し、各地域および各国の経済の多様性、社会・文化の多様性、生物の多様性を損なうことなく互いに尊重し合うもう一つの(オルタナティヴな)ルールづくりです。

 今考えられている「日米二国間」貿易交渉は、TPPに替わるものであり、その性質上TPPの延長上にあるものです。
 私たちは、現在係争中の訴訟でTPPの違憲性を司法に厳しく問い続けるとともに、「二国間」貿易交渉に対しても厳しい姿勢で臨んでいくことを、ここに改めて表明します。

以 上

(注) TPP協定 第30章5条
1 この協定は、全ての原署名国がそれぞれの関係する国内法上の手続を完了した旨を書面により寄託者に通報した日の後、60日で効力を生ずる。
2 この協定は、この協定の署名の日から2年の期間内に全ての原署名国がそれぞれの関係する国内法上の手続を完了した旨を書面により寄託者に通報しなかった場合において、少なくとも6つの原署名国であって、これらの2013年における国内総生産の合計が原署名国の2013年における国内総生産の合計の85パーセント以上を占めるものが当該期間内にそれぞれの関係する国内法上の手続を完了した旨を書面により寄託者に通報したときは、当該期間の満了の後60日で効力を生ずる。
3 この協定は、1又は2の規定に従って効力を生じない場合には、少なくとも6の原署名国であって、これらの2013年における国内総生産の合計が原署名国の2013年における国内総生産の合計の85パーセント以上を占めるものがそれぞれの関係する国内法上の手続を完了した旨を書面により寄託者に通報した日の後60日で効力を生ずる。

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