2015年11月16日(月)、TPP交渉差止・違憲訴訟の第2回口頭弁論期日が東京地方裁判所103法廷において開かれ、98名の傍聴席は抽選で満席となりました。
当日は、原告である元外務省国際情報局長の孫崎享さん、NPO法人アトピッ子地球の子ネットワーク事務局長の赤城智美さんによる意見陳述を行う予定でしたが、裁判官は、第1回期日では3人の意見陳述を認めたのに関わらず、事前の進行協議で、今後の原告意見陳述を認めない考えを明らかにしました。そのため、原告側の訴訟代理人(弁護団)は、まず訴訟進行について「毎回の法廷で、原告3名の意見陳述を各10分間ずつ保証すること」「原告代理人の準備書面の陳述を少なくとも30分間保証すること」を求める申し入れを行いました。
辻恵弁護士は、申し入れの理由について、民事訴訟法87条1項で、「当事者は、訴訟について、裁判所において口頭弁論しなければならない」と口頭弁論主義を原則としていること、同249条1項では、「判決は、その基本となる口頭弁論に関与した裁判官がする」としていること、また憲法82条で「裁判の対審及び判決は、公開の法廷で行わなければならない」、同32条で「国民は何人も裁判を受ける権利がある」と規定していることを挙げ、原告は口頭主義、直接主義による、納得のいく裁判を受ける権利があると強く主張しました。しかし裁判長は、「意見陳述の機会は認めない」の一点張りでした。
一方で、裁判長からは「次回以降は次回で検討する」、被告側からは「事前に準備書面として出されれば対応する」との返答を得て、弁護団は、予め用意していた原告の準備書面を留保し、次回提出することとしました。
原告代理人の準備書面陳述では、まず田井勝弁護士が、第1準備書面で国の主張に対する反論を陳述。「TPPが例え将来の権利関係であったとしても、確認を求める利益は存するし、すでに権利は侵害され続けている。知る権利、人格権、生存権など、具体的権利義務に関する争いであることは明確」と述べました。
次に、岩月浩二弁護団共同代表は、第2準備書面でISD条項について陳述。米韓FTA交渉過程において、韓国法務部が「国内法秩序全体に対してISD条項が超憲法的な影響を及ぼし、憲法違反の問題が生じる」と指摘、他方で最高裁に当たる大法院は、「司法府として国内紛争に関する裁判機能を放棄することはできない」とするなど、韓国の法律家がISD条項の危険性を憂慮していたことを引用しました。翻って、我が国の裁判所の状況を示し、「ISD条項を、経済問題や政治問題と考えているのではないか。これはすぐれて法的問題であり、憲法秩序の根幹に関わる問題であり、裁判所自らの問題だ」と迫りました。
続いて、近藤ちとせ弁護士は、第3準備書面で食の安全について陳述。輸入を制限するには充分な科学的根拠が必要と定めたSPS(衛星植物検疫措置)章や、不必要な貿易障害を避けるために設けられたTBT(貿易の技術的障害)章によって、将来、日本の制度が変更される懸念は払えないと主張。重いアレルギー症状に悩む原告や、遺伝子組み換え作物を含まない食品を選ぶ利益を有する原告にとっての被害や権利侵害が生じると訴えました。
最後に、酒田芳人弁護士が、裁判所から立証計画の提出を求められたことに関して、国がいつTPP協定案の日本語訳を公開するのかによって、原告も立証計画を検討するとして、被告側に迫りました。被告は、「この場でいつまでにとは申し上げられない」と言葉を濁しながらも、訳文を「出すかどうかを含めて、年内に回答する」との回答を引き出しました。
また、裁判長からは「もう1期日調整したい」と提示があり、2月22日(月)の第3回期日に続いて、4月11日(月)14時30分に第4回の期日が行われることが確定しました。
閉廷後、衆議院第1議員会館多目的ホールで行われた報告集会には250名以上が集まり、弁護団は「いよいよ次回で打ち切られるかという危機感の中、52分間の法廷闘争の末、第4回の期日を勝ち取れたことは、一重に法廷に駆け付けてくださったみなさんのお力だ」と述べ、実質審議に入り、証人尋問を勝ち取るべく力を入れていくことを強調しました。
代表の原中勝征は、「今、我々が頑張らなかったために、とんでもない国を残してしまったら、私たちの責任だ。国民運動としてこの運動を広げ、私たちの責任を果たそう」と呼びかけました。最後に、幹事長で弁護団共同代表の山田正彦は、「第3次訴訟を500人規模で起こしたい。国民主権者である我々が、何としてもTPPを止める、止められる。アメリカ議会も批准できないと確信している」と挨拶し、閉会しました。
▼TPP交渉差止・違憲訴訟 第2回口頭弁論期日 報告(PDFファイル/30ページ)
法廷でのやりとり、報告集会の詳細を記載しています。
▼原告の準備書面/証拠説明書/訴訟進行申入書(PDFファイル)
原告第1準備書面(被告答弁書について)
原告第2準備書面(ISD条項と韓国法律機関の検討について)
原告第3準備書面(TPPが食の安全の関係でもたらす被害について)
証拠説明書1
訴訟進行申入書