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国側から具体的な反論なく。裁判長は次回で審議打ち切りを宣言

 2016年7月20日(月)、TPP交渉差止・違憲訴訟の第5回口頭弁論期日が東京地方裁判所103法廷において開かれました。

 今回も、松本利幸裁判長は原告本人の意見陳述を一人2分ずつ認めました。しかし原告側の意見や問題点の指摘に対して、国側からはこれまで同様に具体的な反論は一切なく、「実質審議」が行われていません。

 次回の第6回口頭弁論期日は11月14日に決まりましたが、裁判長は「事前に主張を見て、さらに立証を続けるのか、裁判所として検討する」と述べました。弁護団は、事実上「次回で結審すると言ったに等しい」(酒田弁護士)と受け取っています。


「日本の農家は奴隷になる」「TPPの最大のターゲットは医療」原告が陳述

 弁論では、二人の原告が意見を述べました。まず、千葉県で農業を営む、さんぶ野菜ネットワーク農業組合法人の下山久信さんは、「多国籍企業が農地を買収して日本の農家が奴隷になってしまうような状況だ。企業の農業参入などを推進する安倍政権の「攻めの農林水産業」は、日本の農業を衰退に導く、亡国の道だ」と訴えました。

 また、北海道がんセンター名誉院長の西尾正道さんは、「米企業によるロビー活動の金額から見れば、TPPの最大のターゲットは医療だ。日本は厚労省の中医協が薬の公定価格を決めているが、TPPが締結されれば、透明性や公平性を確保しないということで、それが不可能になっていく。医薬品の価格が高騰すれば、皆保険制度の破綻を招く」と指摘。農薬や遺伝子組み換えについても、「日本独自の規制が難しくなり、国民の健康が守れなくなる」などと訴えました。


「金融資金の流出で貧困化が進む」「労働者の権利は守れなくなる」弁護団が主張

 訴訟代理人の和田聖仁弁護士は、TPPのなかでもアメリカが最重要視しているとされる「金融サービス」章について主張。「各国政府によるマクロプルーデンシャル措置が、巧みなTPP文言により事実上行使できなくなり、新たな金融危機を招来する危険性がある」と指摘。また、「アメリカ、ウォール街を中心とする勢力の日本に対する狙いは、ゆうちょ・かんぽ資金や、共済資金にある」とし、「こうした資金が日本国内から国際市場に流出すれば、日本社会のより一層の貧困化が進む」と述べました。

 酒田芳人弁護士は、労働者の権利に及ぼす影響について主張。「TPPの締結により、労働者の権利・利益の保護という観点から設立されたILO(国際労働機関)の存在意義が失われる」と指摘。また、米国タフツ大学のTPP影響分析で、日本の雇用は7万4,000人減少すると報告されていることから、「勤労権や生存権の観点からも大きな問題がある」と述べました。さらに、国内法の改悪により、解雇の金銭解決制度が導入など労働者の地位は不安定なものとなる方向にあり、そのなかでTPPが締結されれば、「日本政府は、十分な労働者保護政策を採ることができなくなる恐れがある」と主張しました。


「実質審議をするよう、裁判所にプレッシャーを」「第3次提訴で行政訴訟を検討」

 弁論終了後の報告会で、副代表の池住義憲は「国側から内容的な反論、反証がほとんどない。内容に踏み込むとやばいのか、踏み込むだけのものを持っていないのかもしれない。裁判所に対して、ちゃんと実質審議をするよう、原告がプレッシャーをかけていくことが必要だ」と述べました。

 辻恵弁護士は、「国側は『訴えの利益があるか』『原告の的確があるのか』という点しか述べず、憲法上の権利侵害などの原告の主張に対して、全く反論していない。これが裁判なのか、ということを切り口に、もう一度突っ込む論理を考え、裁判官を追いこんでいきたい」と報告しました。

 弁護団共同代表の岩月浩二弁護士は、「1回、2回で終わってしまってもおかしくない裁判を、しっかりと5回に渡って続けさせた力は、傍聴してくださっているみなさんの力だ。『次回で打ち切る』という裁判長の発言にはまだ含みがある。裁判所を説得するための論理の構築に全力を尽くす」と力を込めました。

 弁護団共同代表で幹事長の山田正彦は、「我々の選択肢としては、裁判官の忌避もあり得る」と述べました。また検討中の第3次提訴について、「明らかになったTPP協定の内容で、実被害が具体的に生じている人、生じつつある人を絞り込み、地位を確認する行政訴訟を行うつもりだ」と報告しました。

▼TPP交渉差止・違憲訴訟 第5回口頭弁論期日 報告(PDFファイル/24ページ)
法廷でのやりとり、報告集会の詳細を記載しています。
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▼原告の準備書面/証拠説明書/書証(PDFファイル)
原告第14準備書面(被告答弁書について)
原告第15準備書面(TPPが医療分野に与える影響・西尾正道)
原告第16準備書面(下山久信)
原告第17準備書面(TPPが金融サービスに与える影響について)
原告第18準備書面(TPPが労働に及ぼす影響について)
証拠説明書3
TPPがもたらす医療崩壊と日本人の健康

▼被告の準備書面(PDFファイル)
準備書面(2)

▼ギャラリー
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