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 安倍政権はニュージーランドおよびオーストラリアとともに、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定からの米国離脱後も同協定を破綻させないで維持しようと必死である。これら3カ国は、米国以外の残りの11カ国は同協定の条文をそのままにして変えるべきではなく、ただ発効に必要な批准国の数を変えるよう主張している。したがって、米国が要求した医薬品、著作権、電子商取引および国有企業に関するひどい条項は残り、見返りは得られないことになろう。また3カ国は、農業、自動車および他の輸出品に関する市場アクセスコミットメントや投資、サービスおよび政府調達の締約国個別表を変えることも望んでいない。

 なぜか?まず、日本およびニュージーランドはTPP協定がいかに素晴らしいか喧伝するうえで政治的資本を多く投資しており、すでに協定を批准している。今廃棄してしまえば政治的に高くつくことになろう。

 次に、TPP協定を変えないでおけば、米国がいずれ戻ってくると夢想していることがある。これはトランプ政権下では起こらない。たとえトランプ政権の後継政権が再加盟したとしても、現行協定以上の要求をしてくるであろう。

 第三に、いわゆる21世紀型協定モデルが脅威にさらされている。日本、ニュージーランドおよびオーストラリアはこれを守るのに必死であり、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)で同じアプローチを推進しており、世界貿易機関(WTO)でも12月にブエノスアイレスで開催される第11回WTO閣僚会議が近づく中で同様である。

他のTPP協定締約国はこうした極端なアプローチを拒絶してきた。8月にシドニーで開かれた秘密会議に関する報道によれば、米国が再び参加するまでTPP協定のルールをいくつか停止することで合意に達した。これまでのところ、これが適用されるのは唯一、バイオ医薬品のマーケティング独占期間(データ保護期間)である。11カ国はそれぞれ、停止したいと考える他の条項のリストを9月後半に日本で開かれる会議に提出する(※9月21日~22日東京で実施)。しかし、これはルールの撤廃を求めたり、市場アクセスの締約国個別表について交渉を再開したりするものではない。各国閣僚は11月にはベトナムで新たなTPP協定を承認するつもりでいる。

 メキシコならびにカナダは新たなTPP協定をできるだけ早く仕上げたいと望んでいる。というのも、米国はTPP協定およびそれ以上のものを北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で要求しているからである。しかし他の締約国は、最初の協定の多くについて交渉を再開したがっている。ベトナムは米国市場へのアクセスと見返りに極めて多くの譲歩を余儀なくされており、その多くを撤回したがっているのは理解できることである。マレーシアはおそらく、政府調達に関して撤回したいと考えているであろう。オーストラリア上院はいずれにせよ協定を承認しない可能性がある。

 ニュージーランドでは、9月23日の選挙により労働党が政権の座につく可能性がある。同党は居住用財産の外国人所有を即座に制限すると表明しているが、これはTPP協定の投資に関するコミットメントでは許されていない。ニュージーランドが投資に関する個別表の交渉再開を求めるのであれば、他諸国も追随する可能性がある。

 確かなことは何もなく、TPP協定は依然として破綻する可能性がある。したがって私たちが直面する課題は、RCEPやWTOといった他の協定において生き長らえることのないよう確保することにある。
(2017年9月11日寄稿)