2023年4月6日
種子法廃止意見確認訴訟原告団・弁護団
TPP交渉差止・違憲訴訟の会
1 本日、種子法廃止違憲確認訴訟原告団・弁護団は、本年3月24日の種子法廃止違憲確認訴訟の敗訴判決(東京地方裁判所民事第2部 品田幸男裁判長:以下「原判決」といいます。)について、東京高等裁判所に控訴しました。
2 本裁判は2019年5月に提訴しました。原告らは、国会で制定された主要農作物種子法(種子法)廃止法によって種子法が廃止されたことが、原告らの「食料への権利」を侵害するので、憲法違反であり無効である、と訴えてきました。
「食料への権利」は、誰でも、いつでもどこでも、良質で十分な量の安全な食料を得る権利です。この権利は、世界人権宣言25条及び社会権規約11条1項に包摂されている人権であって、国際人権法上確立している重要な権利です。ゆえに、わが国の憲法上の権利として保障されるべきです。
また、食料の根本である種の生産体制や安定供給を保証する種子法は、この「食料への権利」に根拠を置く法律です。ゆえに、種子法を廃止することはこの「食料への権利」を侵害することにほかならず、同廃止法は憲法違反であって無効です。
この裁判では、全国の農家(一般農家・採種農家)、消費者が原告となり、合計1489名の原告が、被告国を相手に裁判をたたかってきました。
3 原判決は、①採種農家である原告について、種子法廃止法の施行以降、種子法に基づく公法上の地位(=種子法に基づき自らの土地がほ場指定される地位)を喪失しているから、現実かつ具体的な危険または不安が認められるというべきとし、その地位の「確認の利益」(=原告の確認の訴えを審議する必要があること)を認めました(判決28頁)。
また、②ほ場指定について、仮に県の種子条例で規定されても、法律が廃止された以上、法廃止前と同程度の財政基盤が保証されておらず、ゆえに、同原告に確認の利益があることは変わりないとしました(判決29頁)。③「食料への権利」について、憲法25条で保障される余地がある、ともしました(判決40頁)。
そして、原判決では、④種子法廃止法案の審議時間がわずか約10時間であること、議員の質問に対する返答・資料提出がない中で法案が採決された点も指摘されています(判決38頁)。
しかし、原判決は、⑤種子法によって、「食料への権利」が具体化されているとは言えない以上、原告の主張する権利が憲法上の権利ではない(判決42~45頁)、ゆえに、種子法が廃止されたとしても権利侵害は存しない、として、結局、原告の主張を退けるに至りました。
4 以上のとおり、原判決は原告らの主張を退けている以上、不当判決と言わざるを得ません。
しかしながら、先ほど述べた通り、採種農家の原告について「確認の利益」を認め、そして、「食料への権利」が憲法上の権利として認められる余地を認めています。原告らの訴えた内容についての憲法判断の可能性を否定していません。
この原判決の判断内容は、原告らが控訴審でたたかえる可能性を広げているといえます。
5 控訴審では、種子法に基づいて私たちの権利が具体化されていることを、さらに主張する予定です。
原判決は種子法は「食料増産」という政策的な目的で制定されたものであって、国民の権利を具体化したとは言えないと認定しました(判決41頁)。しかしながら、戦後、この種子法に基づき、都道府県で主要農作物の種生産が続いてきたこと、私たち国民に良好で安全な農作物が提供され続けてきたことは明らかです。これこそ、国民の食料への権利そのものと言えます。
6 原判決の直前、インターネットなどを通じ、本裁判の公正判決を求める署名は5万3724筆が集まりました。また賛同者からはネット上で、「すべての人が安心してご飯を食べられる社会のため種子法を守ろう」「タネを守りましょう。外資系ではなく国産で種を繰り返し使えるもので」「子供たちの為にも守らなければなりません」「食料は国を支える最も重要なものです」など、多くの切実なコメントが寄せられました。
裁判所は、この声を無視するようなことがあってはなりません。そして、私たち原告らは、この声を実現すべく、たたかい続ける必要があります。
私たちは、司法の役割を放棄した不当判決に断固抗議するとともに、控訴審において、食料への権利が憲法上の権利であること、種子法がこの権利を具体化することを再度詳細に述べ、たたかっていきます。
そして、司法が本来の使命を全うする日まで、全力でたたかい続けること、同時に、種子法の復活を求め、裁判外でも奮闘していくことを宣言します。
以 上